2017. 2. 23

30年渡り続けた丸太の橋


今から68年位前、
私の父(先代)が拓いた茶畑があります。

写真奥の二段の茶畑が当時父が開いた茶畑です。

 この茶畑へ行くには小さな谷川を越えなければならず、そこに架けられた手作りの丸太の橋の話です。
45年程前この茶畑を支えていた石垣(写真でいうと奥の2段の茶畑の間の石垣)が崩れてしまい当時子供だった私も復旧の作業を手伝っていました。
父は近くの山にある大きな石を石割り矢やハンマー等を使いながら、大人の腕で一抱えほどある石垣用の石を細工します。その石を一つ一つ積み上げながら高さ4m長さ15m程の石垣を築いていきました。
当時子どもだった私も石垣を作る手伝いをさせられた記憶があります。小石をショウケ(竹でつくった大き目のザル)で運んで石垣の後ろに入れる作業をしていたのですが、小石を運ぶたびに過って落ちたら怪我をするような丸太の橋を渡らなければいけません。「なんでこんな所に茶畑を作らなくてはならないんだ?」と子供心に疑問に思っていた記憶があります。


 それから時を経て、私は二十歳で静岡の茶業研究所を卒業後、一年間製茶問屋で修行させてもらいましたが、両親の意向もありとうとう八女に帰って来て父の仕事を継ぐことになります。ちょうどその頃、ちょっと朽ちてきたこの丸太の橋を一度新しく掛け直したのでした。




 20歳だった私が丸太の橋を架け直してさらに30年程が経ちました。
肥料を運び込んだり、摘みとった茶葉を運び出したりしながら何十回も何百回も渡って来た丸太の橋。
当時は直径20cm程の丸太を使ってましたが、年月を経て段々と周りから朽ちて来て下の小川が見えるようになって来たというより渡るのが危険になって来ました。

※隙間が空いてしまい、渡るのも勇気のいる感じ。




そこで掛け換えも考えていましたが、ちょうどよい具合の丸太が農機具小屋から見つかり取り敢えず補修することに・・・。
隙間が空いた所に丸太を挟み込んで先ずは一安心!実際作業するときには、この丸太の上にアルミブリッジを置いて通ります。


茶畑の樹の寿命もそろそろ限界でもありますが、あと何年この橋を渡るのだろうかと考えつつ次の仕事にとりかかりました。

 実は、お茶の樹は同じように管理していても畑ごとにお茶の味や香が変わります。畑ごとの土の状態によって水はけが良かったり、程々だったり、悪かったりそれだけでもお茶の出来が違ってくるのです。
この丸太の橋の先にある2枚の茶畑は、大きな農業機械も入らないし作業効率は極めて悪いのですが、昔からとても香の良いお茶ができます。
まだまだ丸太の橋を渡ってでも育てたい美味しいお茶ができるのです。



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